こんにちは!
今回はこれまでのオールドレンズリサーチの総まとめ回。各社の50mm f1.4を、マウント横断で並べて比較します。Nikon F・Canon FD・Minolta SR、そしてM42のSuper-Takumar。ずっと確かめたかった仮説がありました。「M42はマウントアダプターでどのミラーレスにも付けられるから、アダプター人気で一番強いはず」という説です。
先に結論を言い切ります。犯人はマウントではありませんでした。通常品どうしで比べると、M42タクマーも御三家もeBay中央値は14,000〜17,000円台でほぼ同じ土俵。M42が強く見えていた正体は、マウントの力ではなく「8枚玉」という希少玉のプレミア(中央値約45,000円=通常品の約3倍)でした。50mm f1.4は、マウントで選ぶな、”玉”で選べ。これが今回の結論です。
調査日と為替について(重要な注記)
この記事は過去リサーチの横断まとめなので、各数字はそれぞれの調査日時点の相場です(Nikkor 7/6・FD 7/7・Rokkor 7/8・タクマー7/20)。時点がそろっていない点はあらかじめご了承ください。為替はタクマー調査時点で1USD≈162.36円(2026年7月20日)。注記として、eBayの円表示は自動換算値なので、実際の入金額とは多少ズレます(利益計算では為替目減りを売値の約2.5%として織り込んでいます)。
まず種明かし:「アダプター人気でM42最強」説を検証したら
M42はスクリューマウントなのでアダプターが安くて豊富。ミラーレス全盛の今、「オールドレンズ遊びの入口=M42」というイメージは強いですよね。だから「M42のタクマー50mm f1.4は御三家より高く売れるはず」と予想して調べに行きました。
ところが、通常品(7枚玉)のeBay中央値は約16,000円。Canon FD(15,397〜17,417円)と同水準、Nikkor非Ai(14,500円)やRokkor(14,586〜16,000円)と比べてもやや上〜同等どまり。「M42圧勝」ではありませんでした。
ではなぜM42が高く見えていたのか。答えはSuper-Takumar初期の「8枚玉」です。中央値約45,000円と、通常品の約3倍。マウントの人気ではなく、「希少玉」のプレミアが平均を引き上げていた、というのが種明かしです。
全マウント横断の比較表(ここが山場)
eBay Sold(Ship to US・発送元日本・レンズ単体)とヤフオク落札相場(オークフリー調べ)から。利益目安はeBay手数料約15%+為替目減り約2.5%、国際送料はレンズなので3,000円(格安の国際クーリエで実費数千円。最新料金は各自でご確認ください)で計算しています。
| レンズ | eBay中央値 | 仕入れ中央値(ヤフオク) | 利益目安 | 調査日 |
|---|---|---|---|---|
| Nikkor 50mm f1.4(非Ai〜Ai-s) | 14,500〜27,900円(世代差大) | 4,300〜14,360円 | 4,400〜6,600円 | 7/6 |
| Canon 旧FD 50mm f1.4 S.S.C. | 15,397円 | 3,990円 | 約5,700円 | 7/7 |
| Canon New FD 50mm f1.4 | 17,417円 | 5,750円 | 約5,600円 | 7/7 |
| MC Rokkor-PG 50mm f1.4 | 約16,000円【n=12参考値】 | 約3,080円【n=20】 | 約7,100円 | 7/8 |
| MD Rokkor 50mm f1.4 | 14,586円【n=17】 | 3,000円【n=9参考値】 | 約6,000円 | 7/8 |
| Super-Takumar 50mm f1.4 8枚玉 | 約45,000円 | 23,000〜29,000円 | 約8,300円 | 7/20 |
| Super-Takumar 50mm f1.4 7枚玉 | 約16,000円 | 5,000〜9,000円 | 約4,400円 | 7/20 |
| Super-Multi-Coated TAKUMAR 50mm f1.4 | 約16,000〜20,000円 | 4,000〜8,000円 | 約5,900円 | 7/20 |
| SMC TAKUMAR 50mm f1.4 | 約13,000〜17,000円 | 3,000〜6,000円(国内最安) | 約4,400円(売値15,000円・仕入れ5,000円の場合) | 7/20 |
眺めてみると、8枚玉というひとつの例外を除けば、どのマウントも利益4,000〜7,000円圏でだいたい戦えることが分かります。マウント間の差より、同じM42の中の「8枚玉と通常品の差」のほうが圧倒的に大きい。差を作るのはマウントではなく”玉”なんです。
タクマー50mm f1.4の内訳(7/20新規リサーチ)
今回新たに調べたタクマー側を少し詳しく。
| 区分 | eBay中央目安 | 国内仕入れ中央 | 回転 |
|---|---|---|---|
| Super-Takumar 8枚玉(初期・希少) | 約45,000円(帯36,500〜57,000円) | 約23,000〜29,000円 | eBay・国内とも活発 |
| Super-Takumar 7枚玉(後期) | 約16,000円(帯8,400〜21,000円) | 約5,000〜9,000円 | 非常に多い |
| Super-Multi-Coated | 約16,000〜20,000円 | 約4,000〜8,000円 | 多い |
| SMC TAKUMAR | 約13,000〜17,000円 | 約3,000〜6,000円(国内最安) | 非常に多い |
国内相場(オークフリー調べ)でも二極化がはっきり出ています。Super-Takumar全体の平均は10,315円(81件)ですが、中身は8枚玉22,800〜34,888円と後期通常品3,000〜9,000円台に割れています。そして注意点。8枚玉の国内オークションは入札30〜56件の激しい競争です。相場を知らずに突っ込むと高値づかみします。単価利益は約8,300円と最大ですが、初心者はまず通常品(7枚玉・SMC)の薄利多売で場数を踏むのが安全です。
状態(持病)別メモ:黄変は致命傷ではない
タクマー50mm f1.4といえば、放射性元素入りガラスによる黄変(いわゆるアトムレンズ)が有名です。今回のデータで面白いのはここ。
- 国内では黄変あり=安く落札される(3,900円の例)。黄変なし訴求はやや高い(13,980円の例)
- ところがeBayでは「De-Yellowed」(黄変除去済み)と整備を訴求した個体が17,702円など、通常品と同等〜やや上で売れています
- つまり黄変は致命的な減点ではありません。マニア人気で下値が保たれている印象で、国内で安く仕入れて整備訴求で売る余地があります
- ほかにも「CLA」「Serviced」(整備済み)表記で数千円の上乗せが通っています
これはタクマー55mm f1.8の記事で出た「価格を動かすのは状態」という結論とも重なります。
8枚玉の見分け方の注意
8枚玉は初期Super-Takumarの一部だけで、銘板だけでは判別できません。eBayでは「8 Element」と明記された個体が高値、というのが明確に出ています。今回の集計でも判別不能の個体は概算7〜8件除外しました。仕入れ時に判別に自信がなければ、8枚玉プレミアを見込んだ高値入札はしないのが鉄則です。
根拠にした売れた例(抜粋・セラー名は伏せています)
- 8枚玉:39,788円(CLA’d・7/19)/45,470円(N MINT++・7/6)/51,966円(Top MINT・7/13)
- 7枚玉:19,486円(Near MINT・7/17)/12,990円(Exc+・7/17)/8,445円(7/16)
- Super-Multi-Coated:20,298円(MINT+・6/30)/16,157円(Exc+5・6/11)/24,358円(Near Mint・7/11)
- SMC:16,238円(MINT・7/13)/13,804円(7/10)/22,734円(Top MINT・7/14)
※ボディ付き・セット・ジャンクは集計から除外しています。
リサーチのコツ
- タクマーは「8 Element」「8枚玉」の明記有無をまず確認。明記なしの初期玉に高値を出さない
- 黄変個体は国内で狙い目。eBayでは「De-Yellowed」「CLA」の整備訴求で戦える
- Nikkorは世代(非Ai/Ai/Ai-s)で相場の幅が大きいので、必ず世代を分けて調べる(詳しくはNikkor 50mm f1.4の記事へ)
- マウント間の優劣探しに時間を使うより、同じレンズ内の「希少玉」「状態プレミア」を見つける目を鍛えるほうが効きます
シリーズを振り返ると、結論は一本の線に
このオールドレンズリサーチ、振り返ると結論がきれいにつながっています。
- タクマー55mm f1.8:「世代で選ぶな、状態で選べ」
- M42×Kマウント比較:「マウントで商売の型が変わる」(数で回すM42、美品狙い撃ちのKマウント)
- 今回の50mm f1.4横断:「マウントで選ぶな、”玉”で選べ」
共通するのは、「◯◯だから高い」というラベル(世代名・マウント名)は当てにならず、価格を決めるのは個体そのもの(希少玉かどうか・状態がいいか)ということ。Canon FDのリサーチ記事やRokkorのリサーチ記事でも同じ構図が見えていました。タクマー50mm f1.4自体も、7月上旬の単独リサーチで「同じ名前で中身が別物」と書いたとおりで、今回のデータはその最新版でもあります。(東京店頭リサーチもあわせてどうぞ。)
まとめ
- 「アダプター人気でM42最強」説は部分支持どまり。通常品どうしなら御三家とほぼ同水準(eBay中央値14,000〜17,000円台)
- M42が強く見えていた正体は8枚玉プレミア(中央値約45,000円=通常品の約3倍)。マウントの力ではなく希少玉の力
- どのマウントの50mm f1.4も利益4,000〜7,000円圏でだいたい戦える。差を作るのは①希少玉、②状態
- 8枚玉は単価利益最大(約8,300円)だが国内は入札30〜56件の競争。初心者は通常品の薄利多売から
- 黄変は致命傷ではない。国内で安く仕入れ、eBayで整備訴求という型がある
- 各数字はそれぞれの調査日時点の相場(7/6〜7/20)。仕入れ前に最新相場の確認を
マウント論争はロマンがありますが、財布に効くのは「玉」と「状態」を見る目でした。次にレンズを手に取るときは、マウントの刻印より先に、銘板と玉の中をのぞき込んでみてくださいね!



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