こんにちは!
今回は Nikon の Micro-Nikkor 105mm F2.8、MFのAi-SとAFのAF-Dを実売データで比べました。調べる前の私の関心は「MFとAF、どっちが高く売れるのか」でしたが、出てきた答えは少し違うところにありました。
先に結論です。
- 相場としては、Ai-S(MF)のほうがわずかに高い。ただし差はeBay中央で約2,000円、ヤフオク平均で約1,300円と小さいです
- その差より、状態の差のほうが大きく効きます。マクロレンズは難ありになると完動美品から3〜5割落ちます
- 実際、私が2026年7月に売った2本では相場と逆の結果になりました。相場では上のはずのAi-Sが10,240円、下のはずのAF-Dが11,000円。Ai-Sに絞り羽根の油染みがあったためです
| Ai-S(MF) | AF-D(AF) | |
|---|---|---|
| eBay実売の中央目安 | 約26,000〜27,000円 | 約24,000〜25,000円 |
| ヤフオク落札の掲載平均 | 15,403円 | 14,110円 |
| 相場としての優劣 | Ai-S がわずかに上(差は約1,300〜2,000円) | |
| 私が実際に売った2本 | 10,240円(油染みあり) | 11,000円 |
| 結果 | 逆転。760円ぶんAF-Dのほうが高く売れました | |
相場差2,000円は、状態ひとつで簡単に消えます。この記事で書きたいのは、そこです。
調査日とデータの前提
調査日:2026年8月9日。為替は1USD=約157.8円(eBayの同一商品のドル表示から逆算)です。以下、円が実売値、ドルは換算値になります。
使ったデータと、除外したものを先に書いておきます。
- eBay Sold(Item location = Japan・Ship to United States・直近3〜4ヶ月)と、ヤフオク落札相場(オークフリー調べ・直近180日/2026年2〜7月)のみ。出品中の希望価格は使っていません
- VR付きの AF-S 105mm F2.8G は完全に除外しました(今回の集計に混入はありません)。相場帯がまったく別のレンズです
- 旧Ai(非Ai-S)、Micro 105mm F4、レンズセット、接写リング(PN-11/PK-13)同梱も除外しています
- 抜き取り確認をしています。鏡胴の刻印、絞り距離目盛り、スカラップ状の金属ピントリングを写真で見て区分しました
- ヤフオクの「中央」は、掲載平均と落札の分布から読み取った目安です。厳密な中央値ではないので、この記事では「約」を付けて書いています
Ai-S と AF-D の見分け方(ここでつまずきます)
このレンズ、リサーチで最初に手こずるのが名前です。Ai/Ai-S/AF/AF-D/VR(G)と5種類あって、出品タイトルの書き方がバラバラなので、検索するとぜんぶ混ざって出てきます。
| 区分 | ピント | 見た目・確認ポイント |
|---|---|---|
| 旧Ai(非Ai-S) | MF | 今回は除外。刻印で判別します |
| Ai-S | MF | スカラップ状(波形)の金属ピントリング。鏡胴に絞り距離目盛り |
| AF | AF | AF-Dの前身。D表記なし |
| AF-D | AF | 型名に「F2.8D」の D が入ります |
| AF-S 105mm F2.8G VR | AF | 別物。手ブレ補正付きで相場帯が違います |
実務的なコツはシンプルで、検索語に “Ai-S” / “F2.8D” を入れて分離することです。「Micro Nikkor 105mm」だけで検索すると、5区分が全部混ざった相場を見ることになります。それだと数字はまったく当てになりません。
この「名前が似ていて相場が違う」問題は、当ブログでは何度も出てきています。OLYMPUS μシリーズやMINOLTA CLEのときと同じで、型番の末尾ひと文字をまず疑うのが安全です。
eBay実売価格(日本セラー・完動/美品・レンズ単体)
| 区分 | 件数(n) | 最安 | 中央の目安 | 最高(通常の美品) |
|---|---|---|---|---|
| Ai-S(MF) | 約50 | 約15,600円($99) | 約26,000〜27,000円($165〜171) | 約45,700円($290) |
| AF-D(AF) | 約60 | 約15,800円($100) | 約24,000〜25,000円($152〜158) | 約39,400円($250) |
中央で見ると、Ai-Sのほうが約2,000円上です。最高値も、通常の美品でAi-Sが約45,700円、AF-Dが約39,400円と、Ai-Sが上に伸びています。
別枠のメモとして、「箱付き未使用」級のAi-Sは5〜5.5万円まで行きます。ここは仕入れで狙える帯ではないので、集計には入れていません。逆方向では、Ai-Sの部品取りが約11,700円。完動美品の中央(26,000〜27,000円)に対して半分以下です。
ヤフオク仕入れ相場(オークフリー調べ・直近180日)
| 区分 | 件数(n) | 掲載平均 | 完動美品・レンズ単体の中心 | 四分位の目安 |
|---|---|---|---|---|
| Ai-S(MF) | 132 | 15,403円 | 約13,000〜15,000円 | 下位 約11,000円台/上位 約19,000〜21,000円台 |
| AF-D(AF) | 231 | 14,110円 | 約12,000〜15,000円 | 下位 約8,000〜9,000円台/上位 約17,000〜18,000円台 |
くり返しになりますが、この「中心」は掲載平均と分布から読み取った目安です。厳密な中央値ではありません。
ここでも掲載平均はAi-Sが上(15,403円 と 14,110円、差 約1,300円)で、eBayと同じ向きになりました。
それとは別に、状態による散らばりが目立ちます。ジャンク・難ありは8,000円前後。上のほうでは防湿庫保管・箱付きが26,000円という例もありました。同じレンズで3倍以上の幅です。
手取りと利益の見積もり
計算のルールを確認しておきます。
- eBay手数料 約15% + 為替目減り 約2.5%。合わせて売値×0.82875が残る計算です
- そこから国際送料を引きます。レンズなので3,000円で見積もりました(格安の国際クーリエで実費数千円。最新の料金は各自でご確認ください)
計算の詳しい中身はeBay手数料の計算の記事にまとめてあります。
| Ai-S(MF) | AF-D(AF) | |
|---|---|---|
| 仕入れ(ヤフオク) | 14,000円 | 13,000円 |
| eBay売値(中央) | 26,500円 | 24,500円 |
| 手取り(×0.82875 −3,000円) | 約19,000円 | 約17,300円 |
| 利益 | 約5,000円 | 約4,300円 |
| 資金効率(利益÷仕入れ) | 約35% | 約33% |
両区分とも薄利です。資金効率は悪くない数字ですが、1本あたりの利益額は4,000〜5,000円。国際発送と英語対応をして、この金額です。
損益分岐になる仕入れ額を出しておきます
薄利ということは、仕入れ値の余裕がほとんどないということです。利益がちょうどゼロになる仕入れ額を計算しました。
| 区分 | eBay売値(中央) | これ以上で仕入れると利益が消える金額 |
|---|---|---|
| Ai-S(MF) | 26,500円 | 約18,962円 |
| AF-D(AF) | 24,500円 | 約17,304円 |
ここにヤフオクの上位帯を当てはめてみます。Ai-Sの上位帯は約19,000〜21,000円台なので、20,000円で落札すると 18,962 − 20,000 = 約1,000円の赤字。AF-Dの上位帯は約17,000〜18,000円台で、17,500円で落札すると 17,304 − 17,500 = ほぼゼロです。
つまり、仕入れが1万円台後半に乗った時点で、この機種の利益はほぼ消えます。入札で競って上位帯まで行ってしまうと、手間だけ残る取引になります。
この機種で稼ぐなら、1万円前後の完動並品を安く拾うしかない——というのが、素直な読み取りです。相場の真ん中で買って真ん中で売る、では成立しにくいレンズでした。
仮説検証:MFのほうが高いのか
調べる前の仮説は「オールドレンズ人気で、MFのAi-SのほうがAF-Dより高いのではないか」でした。
答えはわずかにYESです。
| データ | Ai-S(MF) | AF-D(AF) | 差 |
|---|---|---|---|
| eBay中央の目安 | 約26,000〜27,000円 | 約24,000〜25,000円 | 約2,000円 |
| ヤフオク掲載平均 | 15,403円 | 14,110円 | 約1,300円 |
売る側(eBay)と買う側(ヤフオク)の両方で、一貫してAi-Sが上に出ました。片方だけなら偶然を疑いますが、両方で同じ向きなら、傾向としては認めていいと思います。「オールドレンズ人気でMFが上がる説」がわずかに出ていて、逆の「実用性でAFが上がる説」は優勢ではありませんでした。
ただ、その差は約1,300〜2,000円です。利益が4,000〜5,000円のレンズで2,000円は小さくありませんが、次の章で見るとおり、この程度の差は状態ひとつで簡単にひっくり返ります。
自分の2本を検算してみたら、逆転していた
ここが今回いちばん書きたかったところです。μシリーズの回から続けている、自分の売却を実売データで検算するコーナーです。
2026年7月、私はこのレンズをメルカリで2本売っていました。Ai-S(MF)とAF-D(AF)が1本ずつ。しかも2日違いで売れています。比較の条件としては、これ以上ないくらい揃っていました。
状態も、ほぼ同等です。
- 外観にスレ傷あり
- レンズ内にチリ・ホコリあり
- 大きなカビ・クモリなし
- 動作良好
- 付属は前後キャップのみ
違いはひとつだけ。Ai-Sのほうに、絞り羽根の油染みがありました。
結果です。
| 実際の売値 | 売却日 | ヤフオク相場 | 相場との比較 | |
|---|---|---|---|---|
| Ai-S(MF・油染みあり) | 10,240円 | 7/21 | 11,000〜15,000円 | 下限を下回る |
| AF-D(AF) | 11,000円 | 7/23 | 12,000〜15,000円 | 下限のやや下 |
相場では、Ai-SのほうがAF-Dより1,300〜2,000円高いはずでした。ところが実際に売れたのは、AF-D 11,000円 > Ai-S 10,240円。760円ぶん、順序が入れ替わっています。
原因ははっきりしていて、Ai-Sの絞り羽根の油染みです。マクロレンズで絞り羽根に油が回っていると、絞りの動きが渋くなる可能性があるため、買う側は当然そこを見ます。2,000円の相場差が、油染みひとつで消えて、さらに逆転したということです。
もうひとつ気づいたのは、油染みのないAF-Dのほうも相場の下限より下だったことです。こちらは「外観スレ傷」「レンズ内チリ・ホコリ」「付属はキャップのみ」という条件が効いていると考えられます。相場表の「13,000〜15,000円」という帯は完動美品の帯であって、スレ傷とチリのある個体はその下に着地します。当たり前のようですが、相場表を見るときに一番忘れやすいところだと思います。
この2本については「安く売ってしまった」というより、状態どおりの値段が付いたと見ています。書き残しておきたいのは、そこではなく、相場表の機種差だけを見て仕入れ判断をしていたら、この逆転は予測できなかったという点です。
マクロは、状態の落差が大きい
今回もうひとつ確認できたのが、マクロレンズは状態による価格の落差が大きいということです。
| 状態 | 価格 | 完動美品との比較 |
|---|---|---|
| 完動美品(ヤフオク) | 約13,000〜15,000円 | — |
| ジャンク・難あり(ヤフオク) | 8,000円前後 | 約4割落ち |
| 完動美品(eBay・Ai-S中央) | 約26,000〜27,000円 | — |
| 部品取り(eBay・Ai-S) | 約11,700円 | 半分以下 |
ヤフオクで3〜5割落ち、eBayの部品取りに至っては半分以下です。これはMFレンズ一般より落差が大きめだと感じています。マクロは寄って撮るレンズなので、絞りの動きやレンズ内の状態がそのまま写りに出ます。買う側がシビアに見るのは自然なことだと思います。
そして、この落差の大きさを、さっきの数字と並べてみてください。
- 機種の差(Ai-S と AF-D)……約1,300〜2,000円
- 状態の差(完動美品 と 難あり)……5,000〜7,000円、あるいはそれ以上
桁がひとつ違います。「MFとAF、どっちを仕入れるか」で悩む時間があるなら、その時間は目の前の1本の絞り羽根を確認するほうに使ったほうが、金額としては効きます。
根拠にした売れた例(数件)
Ai-S(MF)eBay Sold
- Near MINT w/caps 約25,399円(8/7)
- MINT w/HS-14 Hood 約25,240円(8/2)
- Almost MINT 約20,507円(8/5)
- w/Hood Near MINT 約15,618円(8/1・最安寄り)
- Almost Unused 約45,749円(7/29・上振れ)
AF-D(AF)eBay Sold
- N MINT- 約28,239円(4/27)
- Top MINT 約19,718円(7/12)
- Near MINT 約18,930円(8/6)
- Exc+4 約15,774円(7/12・最安寄り)
- w/Hood Almost Unused 約39,438円(6/24・上振れ)
並べてみると、価格を決めているのは区分名ではなくコンディション表記だとよく分かります。Near MINT なら2万円台、Exc+4 だと1万円台。同じAi-Sの中で、状態表記だけで1万円近く動いています。
リサーチのコツ
- 検索語に “Ai-S” / “F2.8D” を必ず入れる。「Micro Nikkor 105mm」だけだと、Ai/Ai-S/AF/AF-D/VR(G)が全部混ざります
- VR付き(AF-S 105mm F2.8G)を弾く。相場帯が別物なので、1本混ざるだけで平均が動きます
- 接写リング(PN-11/PK-13)やレンズセットの同梱を除外する。レンズ単体の相場が見えなくなります
- 写真で鏡胴を確認する。Ai-Sはスカラップ状の金属ピントリングと絞り距離目盛りが目印です。タイトルの表記は当てになりません
- 商品説明の「絞り羽根」の記載を必ず読む。油染み・動作の渋さの記載があれば、相場の下限より下を想定してください。これがこのレンズで一番お金に効く確認項目です
- ヤフオクの上位帯(Ai-S 19,000円台〜/AF-D 17,000円台〜)では入札しない。その金額で買うと利益が残りません
付属品のメモ
フード(HS-14)や専用ケース付きは、数百〜数千円のプラスになります。ただしHS-14フード単体で700円落札という例もあり、価格を大きく動かす要素ではありません。「フード付きだから高く買っていい」という判断材料にはしないほうが安全です。
まとめ
- 調査日は2026年8月9日、為替は1USD=約157.8円。eBay Sold(Item location=Japan・Ship to US)とヤフオク落札(オークフリー調べ・直近180日)のみ使用
- VR付き(AF-S 105mm F2.8G)、旧Ai、Micro 105mm F4、セット・接写リング同梱は除外。ヤフオクの「中心」は掲載平均と分布からの目安で、厳密な中央値ではありません
- 相場はAi-S(MF)がわずかに上。eBay中央で約2,000円、ヤフオク掲載平均で約1,300円の差。両プラットフォームで向きが一致しました
- 利益はAi-S 約5,000円(効率 約35%)/AF-D 約4,300円(効率 約33%)。両区分とも薄利です(×0.82875・レンズ送料3,000円で計算)
- 損益分岐の仕入れ額は Ai-S 約18,962円/AF-D 約17,304円。1万円台後半で仕入れると利益は消えます。狙うなら1万円前後の完動並品です
- 私が7月に売った2本は、相場と逆転しました。Ai-S(油染みあり)10,240円 < AF-D 11,000円。760円差
- 2本の状態はほぼ同等(外観スレ傷/レンズ内チリ・ホコリ/カビ・クモリなし/動作良好/キャップのみ)で、違いはAi-Sの絞り羽根の油染みだけでした
- マクロは状態の落差が大きい。ジャンク・難ありは完動美品から3〜5割落ち(ヤフオク8,000円前後、eBayの部品取りAi-S 約11,700円)
- 機種の差は約1,300〜2,000円、状態の差は5,000〜7,000円以上。効く金額の桁が違います
- 仕入れ時にいちばん見るべきは絞り羽根の記載。フード(HS-14)の有無は数百〜数千円で、判断を変えるほどではありません
今回、自分の売却記録を実売データに突き合わせて、はじめて「なぜAF-Dのほうが高く売れたのか」が説明できました。売った当時は、2日違いで似た値段が付いたな、くらいにしか思っていなかったのです。
相場表を見ていると、つい機種名の列を追いかけてしまいます。でも実際に値段を動かしていたのは、表に載っていない絞り羽根の油染みでした。次の仕入れのとき、機種名を確認したあとにもう一往復、絞り羽根の記載まで見に行ってもらえたら、この記事を書いた甲斐があります。



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